Bin of thoughts (by um1gu)

色々な界隈に足を跨いだり突っ込んだりしてるオタクによる考えをある程度纏める場所

A Hat in Timeというゲームについてつらつらと

 

  1. まえがき

 A Hat in Timeは2017年に発売された3Dプラットフォーマーゲーム[i]である。私はこのゲームを100%クリア[ii]して、追加要素のDeath Wishをほとんどクリアしたので何か書けねえかなと思ったので、ディレクターのJonas “Mekucube” Kærlevのインタビューを中心に少しでも核の部分について触れていきたい。

  1. Gears for Breakfast

 A Hat in Timeを開発したスタジオであるGears for Breakfastは、デンマークをはじめとしてイギリス、アメリカ、オセアニアなど世界中からメンバーが集まって作られた。その開発も現代らしく、メンバーがほとんど顔を合わせる事がなく(というかできない)各自オンラインで作業の進捗などを共有して開発を進める、といった方法で行われてきた。

 そんな彼らを率いるのはデンマークJonas “Mekucube” Kærlevである。彼はもともとLeft 4 DeadTeam Fortress 2などのコミュニティで活躍していたmod製作者の一人で、Parkour Fortressや、TF2wareといった人気modの制作を行った人物である。彼曰く、”Moddingはゲーム制作を始めるためのいい方法”としており、かつ”AAAゲームのエンジンに対する深い理解が必要”としている[iii]。また、そういった理由でスタジオには彼のほかにも多くの(元)mod製作者たちが集まっている、と続ける。例えば、アートディレクター兼レベルデザイナーの一人であるWilliam T. NichollsはCS:GOのマップ制作を行っていたり、リードアニメーターのCameron “Hypo” TurnerTF2のタウントが公式採用された経緯を持つmodder、といった具合である。あまり関係ないかもしれないが、modに慣れ親しんだ製作者がゲームの制作を行うといった経緯[iv]は、かつてのCSシリーズやCivilization Vの開発を彷彿とさせる。Gears for Breakfastはこういったポジティブな連鎖が今なお存在しているという好例なのかもしれない。

  1. 開発

 そういったことからある日ゲームを作ってみようとしたJonasは、もともと3Dプラットフォーマーではなく、プラットフォーマー要素のある”剣を振って敵を倒す”ようなゲームを作ろうとしていた。しかし当時は”プログラミングが上手くなかったから戦闘が単調になりすぎた”ために、プラットフォーマー要素に集中して徐々に形づけられたのがA Hat in Timeになっていった。もちろん、マリオ64バンジョーとカズーイの大冒険、サイコノーツなどのプラットフォーマーに影響を受けたのは言うまでもない。しかし、同じくしてJonasは、”単独で成り立つようなゲームを作りたかった”とも言っており、特に3Dプラットフォーマーにおける必然的な問題であるカメラワークに対しては”(“インスパイアされた≒昔の作品だからカメラワークが悪いのは仕方ない”といった文脈に関して)なんか言い訳じみてるからもっといいカメラを作るぞチクショウ”としている。ちなみに、システムとしては方向の予測をはじめ、シルエットやディザリングといった手法が取り入れられており、シームレスなカメラワークになっている[v]。とすると、これらの作品群からただ単純にインスパイアだけではなくそれ以上のものを作り上げていったといえるだろう。

 作品の世界観やレベルデザインも力が入った部分になっている。例えば、マフィアが住んでいる離島から突如として鳥たちが映画賞を競うスタジオに舞台が移ったり、更にはいきなり現れたSnatcherに魂を奪われたかと思えばヤギたちが集う高山を駆け巡ったりなど、すべてのチャプター・キャラクターが新鮮でチャーミング、かつ記憶に残るものになっている。また、Jonasは、プラットフォーミングやハードコア要素だけではなく、すべてのレベルが最大限に楽しめるように努力をしたと言っており、やはり根幹にあるのは楽しむ事である、と付け加えていた。もちろん、楽しませるためのレベルデザインについても例外ではない。チャプター1では、タイムピースを一つ取ったら次のレベルが解放[vi]、といった典型的な進行になっているが、チャプター2ではそれぞれの監督から映画という形[vii]でレベルが与えられ、チャプターのボスもその映画の”評判”によってプレイヤーが決定できるというユニークなシステムになっている。打って変わってチャプター3では、上述したSnatcherに契約をやや強引に締結されてレベルが解放されるというゲーム史上もっとも珍しいと言えるものとなった。チャプター4も他の物とは違う完全なフリーローム式のレベルとなっており、デフォルトの帽子を駆使して各頂上を目指すことになる。それぞれのレベルが独自のシステムや特徴、世界観を保有しており飽きを感じさせない作りとなっている。またグラフィックの面では、風のタクト風のセルシェーディング(トゥーンレンダリング)[viii]を用いたものを使用する予定だったが、途中から変更が入り、現在のようなグラフィックになっている。

 ストーリーの構成はかなり型破りなものになったと彼は語る。特に興味深いのは各所にちりばめられたジョークで、それに対してJonasは”客層は自分たちと大体似たものになるのは想定していたから、だいたいやりたいことができるようになった。…スタジオの仲間は、The Onion[ix]とかを読んでたようなヤングアダルトが多いから、色々とうんざりもするし、シニカルでもある。そういったことが頭にある事を書ける助けになった…”と語っている。またNyakuza DLCを例に挙げて、あくまで大人(ヤングアダルト)向けに作っていったと語っている。

 そういえばさっきの下線見た?その通り!ゲーム中の無駄な要素[x]を無くそうとしていた事も大きなポイントとJonasは確信している。特に、ゲームを進めていけばすべての帽子が必要となるようなレベルデザインや、新規プレイヤーを困惑させないようなデザインを念頭に開発を進めていったともしている。

 総じて、ゲームの開発においては”ノスタルジックじゃ終わらない”といった昭和チックな言い方がふさわしいような、着実に進化を目的に据えた素晴らしい目標があったと言えるだろう。

  1. 今からでも全然間に合う[xi]・おすすめポイント

・主人公のHat Kidがドチャクソかわいい!!!

 このゲームの主人公であるエイリアンの少女、Hat Kidが超かわいい。むしろ絵よりモデルの方がかわいいってなってしまいそうなくらいかわいい。VAのApphia Yuのボイスも超かわいい。いやマジでロリコンになりそう[xii]

参考画像:

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・MODフレンドリーでレッツDIY(PC版限定)

 2にもある通り、そりゃmod作ってた人間が作ったゲームだもん、やらないわけないっしょ。それにストアページには”Community-funded, community-focused”とある通り、コミュニティを一番に考えていてくれてるからほとんど自由にいろいろ作れるような環境にある。もちろん人を傷つけない範囲[xiii]で。

  1. おわりに

 A Hat in TimeCupheadオデッセイに挟まれるようにして発売されてしまったためなかなか注目を得られる事がないゲームであるが、傑作であることは間違いない。というわけでこの記事を見たら是非ともプレイしてほしい。(適当)

store.steampowered.com正直言うとこの記事ってどっちかってーと既プレイ向けじゃねーか

 

[i] マリオ64・サンシャインやバンジョーとカズーイの大冒険みたいなやつ、といえば大体わかる。これについては後述する。

[ii] 2つのDLCに含まれるチャプターを全クリで100%になる。ちなみにDeath Wishをクリアする度に100%から増えていくためインゲームと実質的な100%は異なる。

[iii] https://www.goombastomp.com/interview-jonas-kaerlev/

[iv] A Hat in Timeの場合はModとは”別の”ゲームである、という差異はある。

[v] もちろん”””””””””比較的”””””””””””(steamのレビューにカメラの問題点がいくつか指摘されているため)

[vi] ただしプレイするためにはポン(マリオで言うコインの万能版みたいなやつ)を支払う必要がある。

[vii] ギャラは発生してないらしい。あと肖像権も侵害されている可能性大。

[viii] ボダランやギルティギアみたいな感じの手法。

[ix] アメリカの風刺報道機関。

[x] (まだ有用ではあるけど)サンシャインの青コインとか。

[xi] ひょっとしたら海外と同じく2019/10/18 or19に日本でもNintendo Switch版が出ると思うので。

[xii] 俺はおねショタが好き。

[xiii] ただしオデッセイのキャッピーとイ壬天堂法務部は除く。あいつらMod消してきそう。

参考資料集:

www.youtube.com

www.youtube.com

www.player2.net.au

game.watch.impress.co.jp

www.kickstarter.com

www.destructoid.com