Bin of thoughts (by um1gu)

色々な界隈に足を跨いだり突っ込んだりしてるオタクによる考えをある程度纏める場所

アイマスについて個人的な持論、特に海外に対することについて(その2)、お気持ち表明

はじめに

  今回はアイマスと海外展開についての記事第2弾(というよりリファイン)として、およそ2年前に書いた記事[i]を参照しつつもう一度理由の考察と、まったく関係ない自分の意見を述べていく。そもそも、この記事を書く契機になったのはSteam版のアイドルマスタースターリットシーズンが東(南)アジア以外のリージョンロック、いわゆる(逆)おま国[ii]状態であることが分かったためである。ちなみに、自分の友人を辿って確認できた分ではオーストラリア、アメリカ、スイス、カナダ、ハンガリー、ドイツ、ロシア[iii]が該当している。世界的な配信を手軽に行えるSteamをプラットフォームにしているにも拘わらずこの判断を下せたのは非常に興味深い。

 

 1. 概況

  まず、前回の§2?で運営の海外展開に対する姿勢について「やる気がない」と堂々と言ってしまっていることを再考していく。アジア圏(ここでは中国、韓国の東アジアとシンガポール等東南アジア)においては相変わらず精力的に展開を行っており、スターリットシーズンの対応言語[iv]も中国語(簡・繫)と韓国語の吹き替え以外[v]をフルサポートしている。非常によい。その理由として中国や(特に)韓国におけるアイドルシーンを挙げたが、それがより現実味を帯びていることは言うまでもない[vi]。また、アイマスを包括しているもう一つの概念である二次元(Anime-ish)コンテンツという側面でも西側のそれとはかけ離れて日本側に近いものを持っている、むしろアズレンや少前、最近は原神などの非日本産二次元コンテンツがかなり勢力を持っていることから分かるように日本のそれとは大差なくなってきている。これも非常によい[vii]。これらの現状からバンナムアイマスの展開がやりやすいと判断していることがある程度認識できる。

 

2. アイドル≢児童労働

  さて、ここで俎上に上がるのはそれ以外の地域、というより西側に対する姿勢や認識であるが、公式からのコンテンツ供給という点から言えば全く変わっていない。というのもデレステVR以降英訳コンテンツ[viii]は何も出ていないためである。そのバンダイナムコエンターテインメントアジアのアイマス関連ニュースに至ってはVR以外のニュースが全くない[ix]ためあまりやる気がないのはすぐ見て取れると思う。ではその要因についてはどうであろうか。この手の話で度々引用されている児童労働について[x]見てみたい。まずはその全文である。(元サイト消失のため参考サイトより孫引き)

かーず「アイマスのPVがネットで公開されたときの海外の掲示板での反応です。(開発陣は知っていたご様子)、この反響を見る限り海外市場は受け入れてくれると思うのですが、海外ローカライズの予定はあるんでしょうか?」

坂上

アメリカから熱心にファンレターを送ってくるファンの方もおりまして、海外でも発売を期待している声があるのは知っています。ただ海外は海外でいろいろ考え方がありますから。こういう絵をジャパニメーションの延長線上とは見てくれないところがあって、『子供を働かせているゲーム』みたいな考え方をされることもあるんです」

かーず

「そんな解釈をされてしまうんですか!」

坂上

「それこそパイタッチなんて、『コラーッ!』ってなりますよ、セクハラですからね(一同笑い)。真のコミュニケーションパートで空手の練習で叩かれるイベントにも、『えー!女の子を殴るだなんて!』みたいな反応があるので、そういうところをクリアしていかないと海外版は難しいと思います」

  このアイドル活動が児童労働として認識されてしまう懸念については、二通りの批判が行える。一つは近年じわじわと増加している日本アイドルの海外進出である。念頭にあるのはBABYMETALで、主に2014年以降から海外進出が多くなっているとされている[xi]ため、彼女らの年齢を考えても一定時期までは未成年であったにもかかわらず、海外で人気を博している事を考慮すると必ずその解釈をされるということはないのではないだろうか。もう一つの批判はアイマスを非現実存在、つまりフィクションとして割り切り、そこでは自分たちの文化圏と異なる倫理観が社会的通念として存在している、という風に解釈をしてもらう[xii]ことである。これに関しては時代や文化圏を問わずいつでも問題提起されている普遍的なこと[xiii]ではあるものの、先述した現実世界に存在しているアイドルたちと比較してその分離は容易ではないのだろうかと考えている。加えて、アマチュアという分類にはなる(?)が「未成年のキャストが芸能活動を行う」コンテンツの一つの筆頭格は海外展開を精力的に行っていたラブライブがある。またギャルゲー要素とは真逆の位置にあるものの、バンドリも同様のアイドル系コンテンツとして解釈されることがままあるため、そういったハードルに関してはある程度クリアできているのではないのだろうか。なお前回の記事では「過去作の翻訳だけでもどうにかならないか」とかほざいていたが、スターリットシーズンでは近年の展開[xiv]に輪をかけてみんマス傾向が多くみられるため、むしろ相対的に過去作のほうが引っかかる可能性が高くなる。

 

3. コンテンツが来ない理由

  それでは西側にコンテンツ供給がされない理由は何故か。史学徒的[xv]に言ってしまえば「文献がないのでわからん」となってしまう。さすがにそれではcop-outになるので一応ここに記しておく。端的に言えばローカライズの費用対効果が見込めないからだと考えている。これは先程引用したブログやその中で取り上げられていた別のブログ[xvi]にも述べられている通りで、アイマスはそもそもアクション系に比べると動きの少ないテキストベースのフランチャイズである[xvii]ため、自然と文量が増えていくようになる。一度20分弱の動画(それもModのトレイラー集)を翻訳した経験がある身としては、それだけでもかなりの労力を使うのにその数十倍の文量を翻訳するのは非常に骨が折れるのは想像に難くない、というよりしたくもない[xviii]。当然そういったものには高い専門性が要求されるようになり、コストも非常にかさむようになっていく。また、声優事務所やレコード会社が所持している声優・歌の版権についてもコストがついて回るのは言うまでもない[xix]。これらをまとめると「ローカライズの費用対効果が見込めないから」ということになる。公式発表がないので憶測と言ってしまえばそれまでなのだが...

 

4. まとめ

  アイマスの海外展開についてまとめると、アジア圏ではこれまで以上にフランチャイズ展開を進めているにもかかわらず、それ以外では全くと言っていいほど進捗がない。その理由については相変わらず発表されていないものの、児童労働や性的表現などの文化的相違から生じる衝突は理由ではなさそうだ。そうなるとやはり利益が出ないことが足かせとなっているのかもしれない。結局の所ここまで考えても一ユーザー(にすら達してないかもしてないが)の詮索なのでどうしようもない。

 

あとがき. お気持ち表明

 リージョンロック(おま国)をされたらどうやってPCで遊べばいいんすか(全ギレ) 実質割ってくれって言ってるようなもんではないのかと度々思っている。せめて百歩譲って英語のローカライズはコミュニティに任せていいからゲームを遊ぶ権利を奪わないでほしい

 あと最近Internet Clownことテスラのやべー奴ことElon Muskが輿水幸子の画像をツイート[xx]したことで、アイマスのオタクがElon MuskPとか大富豪アイマスPとかいう謎存在を勝手に作り上げたらしいが、これはただ単にそこら辺にあった画像を拾って投稿したくらいでしかないのでそれは正しくない思想である。アレは適当にmemeを投げまくってる謎アカウントなので...

 

(12th/Feb/2021 追記)

オタクより「アイマスが児童労働だったらNickelodeonシットコムほぼ全滅ですが :thonk:」との指摘を頂いた。これは100理ある。

 

[i] https://mrguardrailmgs.hatenablog.com/entry/2018/06/09/220658

[ii] 「リージョン制限のため特定の国・地域から購入できないことを示すネットスラング
〔売ってるがお前の国籍が気に入らない〕あるいは〔お前の国には売ってやんねーよ〕 の略とされる」(おま国まとめWiki* 2020: https://wikiwiki.jp/omakuni/%E3%81%8A%E3%81%BE%E5%9B%BD

[iii] 全て個人調。

[iv] https://store.steampowered.com/app/1046480/THE_IDOLMSTER_STARLIT_SEASON/

[v] 正直アイマスほど声優とキャラクターの結び付きが大きいと敢えて吹き替えをやっても大目玉を食らうのでこれは正しい判断

[vi] ただし方向性はかなり相違があるため注意、あくまで「アイドル」という概念・文化的事象においてそれなりの共通認識・文化的素養があるということである。詳細は長くなるのでここでは取り上げない。

[vii] 何故艦これでもアズレンでも高雄はお姉ちゃんなのか。いやそれがいい。

[viii] なおアジア版の英訳という位置づけであるため、やっぱり西側向きではない。

[ix] https://bandainamcoent.asia/brand/idolmster/

[x] https://sugio-2.hatenadiary.org/entry/20081227/p1

[xi] https://ja.wikipedia.org/wiki/BABYMETAL

[xii] つまりフィクションをフィクションとして割り切ることである。ただしアイマスの場合は日本のアイドル文化がベースとなっているためどちらかと言えば「日本のアイドル文化」に対する文化的相違に向かう感じであるか。

[xiii] 誤解やあらぬプロパガンダとしてこれが取り上げられたら困るので記すが、自分はこの問題について「フィクションは現実にも影響を及ぼすためその中の倫理観にもそれぞれの文化圏における倫理が適用されるべき」という立場と「フィクションはあくまで虚構であり現実存在ではないためそれには影響を出さない。それぞれ固有の世界・倫理観を適用するべき」の双方を支持している。それが認められるかはどうでもいいものの、個人としては両方の肩を持ちたい。

[xiv] プラチナスターズはかなりアイドル間の関係性が多かった記憶がある。というよりアイドルとプレイヤー(プロデューサー)が一対一(ユニットプロデュース除く)の関係性を持っているアイマスって最近じゃシャイニーカラーズくらいなのかと考えている。どっかで見落としていそうなのは否めない。

[xv] ちなみに近代史専攻。それより下の区分については炎上しそうなのでここじゃないどっかで聞いてください。

[xvi] http://dekadenbiyori.blog40.fc2.com/blog-entry-335.html

[xvii] これが非日本語話者にとってどのくらい難しいかというと、Glaswegianはおろか英語がほぼ使えない状態でLimmy’s Showを字幕なしで観るようなものである(?)。

[xviii] アイマスに限らずゲームなどはフォーマルな表現だけでは伝わらない物語・脚本であるためそれを考慮すると猶更である。

[xix] 参考:https://twitter.com/homma_force/status/880102846946918400 。なお楽曲についてアイマスApple MusicやSpotifyはじめサブスクリプションサービスに一切提供していない(Aniutaもゲームサイズのみ)。爆劣を通り越して全謬である。

[xx] https://twitter.com/elonmusk/status/1349129669258448897