Bin of thoughts (by um1gu)

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ULTRAKILLの説明と宣伝

はじめに

 最近不本意既卒になってしまったので、精神的な傷を埋めるために購入したのが今回紹介するULTRAKILL[i]である。ここに記事を書かせるほど非常に満足している(上から目線ではある)ので早速紹介していく。なお、先駆者であるmagrov氏の記事[ii]と重複する部分が存在するので、先行記事として読んでいただいたうえで当記事では別の部分にも着目するようにしたい。

note.com

 

1. 概要とゲームシステム

 ULTRAKILLはArsi "Hakita" Patala[iii]によるFPSゲームで、現在はアーリーアクセスになっている:PRELUDE(OVERTURE: THE MOUTH OF HELL)とACT 1(I): INFINITE HYPERDEATH (LAYER 1: LIMBO)が現在プレイ可能で、パブリッシングはNew Blood Interactive[iv]により行われている。ジャンルとしてはFPSであるものの、CoD、BF等の現代FPSとは違い、公式urlにある通りDevilmayquake(.com)となっておりQuakeDOOM等の古典的FPSをオマージュとしている。近年は同パブリッシャーのDUSK[v]等が盛り上がりを見せている中で、その中でも非常にユニークなシステムを搭載している。

 まず、“MANKIND IS DEAD. BLOOD IS FUEL. HELL IS FULL.” のキャッチコピーが文字通り示すように、主人公のV1は敵の血を浴びて回復することになる。そのため、プレイヤーに対してはキャンピングを行うよりも積極的に接近して攻撃していかせる事をコンセプトとして意図している。二つ目は「スタイル」システムである。単純に言ってしまえばDevilmayquakeの前半にあたるデビルメイクライシリーズに搭載されている「スタイリッシュランク」と同じで、攻撃を受けずに連続で攻撃を与える、その他後述する特殊な行動を行うことによりランクを上げることができる[vi]。また、FPSゲームにしては珍しく、ワンステージ・ランク別評価制をとっており、アーケードライクなゲーム性になっていることも特徴である。プレイヤーはその中でいかにランクを上げるか(具体的に言えば〔スタイリッシュかつスピーディーに敵をより多く倒してクリアするか〕)を目指すこととなり、それを助ける迅速なリスタートも整えられている。オタク的にはFPSになったHotline Miamiシリーズ[vii]に近いと言えばわかりやすいかもしれない。

総じて、かなり速いペースで展開されるゲームであることと、ランク評価制度を取り入れているアーケード的なFPSであるといえるだろう。

2. ゲームプレイ以外の面

 ここが本命(にしようと思っている)の部分である。主に世界感やストーリー、サウンドトラックといったことについて色々書いていく。

 先述の通り、ULTRAKILLはデビルメイクライシリーズに影響を受けている。しかしDMCが影響を受けている以上に、ダンテ・アリギエーリ作の「神曲」から多大なインスピレーションを得ているのではないかと個人的には考えている。例えば、現在発表されているチャプター構成は以下のようになっている:

  • PRELUDE (OVERTURE: THE MOUTH OF HELL)[viii]
  1. ACT 1(I): INFINITE HYPERDEATH[ix]: (LAYER 1: LIMBO, LAYER 2: LUST, LAYER 3: GLUTTON)
  2. ACT 2(II): IMPERFECT HATRED: (LAYER 4: GREED, LAYER 5: WRATH, LAYER 6: HERES)
  3. ACT 3(III): ???(未定): (LAYER 7: VIOLENCE, LAYER 8: FRAUD, LAYER 9: TREACHER)

 中でもチャプター的役割を果たしているLAYERでは、「神曲」で扱われた辺獄+各地獄圏[x](愛欲、貪食、強欲、憤怒、異端、暴力、欺瞞、裏切り)をその名前に冠している。また、0-5のボスアリーナの門には例の”Abandon hope, all ye who enter here” (; "LASCIATE OGNE SPERANZA, VOI CHʼINTRATE"; 「われを過ぎんとする者、すべての望みを捨てよ」[xi])が刻まれており、雰囲気の生成に一役買っている。その割にはその0-5がある地獄圏以前の位置でケルベロスと闘ったり、そいつが思いっきり人型で二足歩行したりしているがそれはそれで面白い。Hakitaは「神曲」を読んだことがないとインタビュー[xii]で語っているものの、インスピレーションとしたDMCで描かれたそれは彼にとって、シューティングゲームで凝り固まった「緋色の業火に包まれた」地獄観とは別の世界[xiii]を表現することができたと語っている。「神曲」オマージュ作品群に新たな風を吹かせてほしいものである。

 

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ちなみにPS1風のグラフィックにすることも可能。

 

 ストーリーについては非常に(?)少なく、血を動力源としたロボットが人類滅亡後の地獄へ突入をするというものである。所々にストーリーを補完する本であったり、とあるボスはカットシーンによる演出があったりはするが、覚えているのは以下で十分である:“MANKIND IS DEAD. BLOOD IS FUEL. HELL IS FULL.” ゲーム性を考慮するとこの位軽い方が助かったりする。

 サウンドトラックはゲームコンセプトに違わずアップテンポでありながら、メリハリ良く作られている[xiv]。特に、戦闘時と非戦闘時の動静が全体を通して上手く構成されている:戦闘時にはドラムンベースとギターといったロック・パンク系を鳴らしまくっているが、エリア掃討時にはビート部分のみを残すといった風にである。城を舞台としたステージではチェンバロ(のサウンド?)を使用したバロック風に、「何かの」体内という場所ではシンセをバリバリに歪ませたサウンドを展開しているなど楽曲そのもののジャンルにも飽きを感じさせない。また、レベル開始前のキオスク端末ではラッセル・モーガンの”Were You Foolin”[xv]をサンプリングしたトラックが使用されていたり、バッハの「主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ」、ドビュッシー「月の光」[xvi]を要所で使うなどかなりのこだわりが見て取れる。

heavenpierceher.bandcamp.com

 ゲームプレイをより彩る部分について、スタイル的には不必要になりがちではあるがしっかりと練られており、個人的にはそれらがプレイヤーを上手く世界観に引き込むことができたのではないかと考えている。(初見プレイ中はそんなに見て回る余裕がないと言われればそうであるが...)

3. おわりに

 今回はダラダラとULTRAKILLの宣伝をしていった。正直この手のゲームは文章を書くより実際にやらせる方が早い気がするため、ぜひともSteamストアページからデモをダウンロードしてほしい。Devilmayquake.comである。

 

余談

 Devilmayquake.comと強調するようにリンクを連呼したが、これはNew Blood Interactiveのお家芸(?)である。例えば、DUSKはdrinkmore.vodka, quakebutspooky.com, Blood3.com, spookyquake.club, notfortnite.com(!)[xvii]といった具合に、Unfortunate Spacemenはそのゲームデザインから、AmongUsWithGuns.com, AmongUs3D.com, NotAmong.us, Deaderspace.com, OhGodSomebodyHelp.meなどかなりはっちゃけている。そう考えるとDevilmayquake.comは比較的おとなしい方なのかも....しれない。

 

[i] Devilmayquake.com

[ii] https://note.com/mgrv/n/n78dd9f32bfd4

[iii] https://twitter.com/HakitaDev

[iv] https://twitter.com/NewBlood

[v] https://store.steampowered.com/app/519860/DUSK

[vi] ちなみにランクとしては8段階で、Ultrakill > SSShitstorm > SSadistic > Supreme > Anarchic > Brutal > Chaotic > Destructiveとなっている。

[vii] https://store.steampowered.com/bundle/7265/Hotline_Miami_Collection/

[viii] これはHellmouth(https://en.wikipedia.org/wiki/Hellmouth)と呼ばれるアングロ=サクソン文化・芸術から発祥した地獄観が元ネタか。

[ix] Hyperdeathは無間地獄みたいなのかと思って調べてみたが、undertaleしか見つからないので文学・芸術的な関連は薄いかもしれない。もしくはかっこいいから適当に付けたとかか。それはそれで良い。

[x] と言ってもその元ネタはカトリック発祥の七つの大罪であるが....

[xi] 藤谷道夫「ダンテ『神曲』地獄篇対訳(上)」, 『帝京大学外国語外国文学論集』第16号, 2010年3月 なお、当該部分は「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」の訳が広く知られているものの、wikipediaではその部分の出典が不明だったため、孫引きを避ける点としても藤谷訳を使用した(すぐ見れたからとか言ってはいけない)。なお青空文庫では山川丙三郎訳 (https://www.aozora.gr.jp/cards/000961/files/4618_13199.html)があり、こちらは「汝等こゝに入るもの一切の望みを棄てよ」である。結局ストレートな現代語訳にしただけでは...

[xii] https://intothebluesky.com/2020/12/19/interview-with-arsi-hakita-patala/

[xiii] 同インタビュー内では、例として第二圏のLUST(愛欲)の舞台を高所に設定していることを語った;これは神曲における愛欲者に対する罰である「地獄の暴風」(藤谷, 2010)をモチーフにしたものである。

[xiv] ちなみに(一部除き)作曲・演奏全てHakitaが行っている。多彩。

[xv] おそらくスタンダードの一曲か。公式音源が見つからなかったので。

[xvi] バッハ、ドビュッシーいずれもパブリック・ドメイン

[xvii] 尤もこれに関してはDavid Szymanskiの影響もあるかもしれない。CEOのDave Oshryと同じく超アクティブ派(オブラート表現)なので。